島をまなぶ、ナビゲートする
最終更新日 2025.06.30
海底遺跡の神秘に迫る!与那国島ダイビングの魅力

日本最西端の島、与那国島。南国ならではの美しい海や珍しいハンマーヘッドシャークとの遭遇に加え、謎に満ちた「海底遺跡」が楽しめるダイビングで人気を博しています。
本記事では、与那国島の海底遺跡の構造や成り立ち、与那国島ダイビングのおすすめの時期、出会える生物や必要なスキル、海底遺跡以外のダイビングポイントについて解説します。
目次
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与那国島の海底遺跡の成り立ち|自然地形説が有力
海底遺跡は、与那国島南部の新川鼻沖で、1986年に与那国島出身のダイビングインストラクターである新嵩 喜八郎氏によって発見されました。新嵩氏はのちに与那国町観光協会を立ち上げ会長として活躍された、与那国島観光の「草分け的な存在」であるダイビングガイドです。
海底遺跡は東西約250m、南北約150m、高低差約25mにも及ぶ巨大な一枚岩で形成されています 。階段状のテラスや直角に切り立った壁、人工的に配置されたような巨石など、人工物のような構造が特徴です。水深20mより浅いところにある平坦面は、現在とほぼ同じ海水準に達した約6000年前以降に形成されたと考えられており、その形状から「古代文明の遺跡である」という説を提唱する声もあります。
一方で、海底遺跡の起源や建造目的が未解明のため自然の造形物であるという説も根強く存在しており、謎に包まれた遺跡であるといえるでしょう。現状は「自然地形説」が有力と考えられています。
人工構造物説|文明が作り上げたものとする説
海底遺跡は人工構造物ではないか、とする説があります。
この説が唱えられた理由として、海底遺跡の内部に人が住んでいたと思われる跡が残っているとの考察が挙げられます。以下に、提唱されているいくつかの説をご紹介します。
古代文明遺跡説
琉球大学理学部の教授であった木村政昭氏を中心に行われた調査では、古代文明の遺跡ではないかという説が唱えられました。この調査で、海底遺跡の内部に直角に切り取られた階段や平坦な通路、排水溝、くさび型を打ち込んだ竪穴跡が発見されています。内部の構造から、かつて古代文明が存在し、何かに使用されていた建物の遺跡でないかと提唱されました。
さらに、新嵩 喜八郎氏が主催する与那国島海底遺跡博物館は、約1万年前の氷河期の終わりと共に海面が上昇し、古代文明の遺跡が水没したのが起源ではないかと提唱しています。
参考: 本高気圧環境・潜水医学会雑誌 vol.42 No.1
中世遺跡説
1990年代から2000年代にかけて琉球大学を中心に行われた調査の結果から、中世の遺跡だとされる説が提唱されています。 この調査で採取した遺跡のサンプルで年代の特定をしたところ、10世紀後半から11世紀前半に海底遺跡が水没したことがわかりました。しかし、この時代の地殻変動の記録が発見されていないことから、この説の真偽を疑問視する人もいます。
石切り場説
海底遺跡は何らかの施設を作るために石を切り出した場ではないかという説もあります。 階段状の地形や直角に切り出されていた地形が発見されたため、この説が唱えられました。
参考:日本経済新聞2008/05/22
自然地形加工説
自然地形を加工した遺跡ではないかという説も考えられています。この説は地質学者のロバート・ショック氏によって提唱されました。海底遺跡の大本は岩が浸食されてできた自然の地形ですが、その地形に人が手を加えて神殿として活用していたのではないかと推測されています。
参考:Yonaguni Enigmatic Underwater Monuments Robert M. Schoch
ムー大陸に関連する遺跡説
与那国島の海底遺跡には、伝説上の大陸である「ムー大陸」との関係性を指摘する声もあります。ムー大陸は約12,000年前に太平洋上に存在し、巨大地震などの天変地異が原因で水没したといわれています。
ムー大陸は現在の太平洋上に存在していたといわれており、与那国島の海底遺跡も太平洋上に存在していることから、ムー大陸と与那国島には関係があると考える説が浮上しました。しかし、巨大な大陸が沈んだとされる証拠が未だ見つかっておらず、ムー大陸の存在自体が疑問視されているため、真相は謎のままです。
参考:Exploration Mysteries: Yonaguni Monument » Explorersweb
自然地形説|風化と侵食によるものとする説
与那国島の海底遺跡は、近年の調査や地質学的解析からは、人工物ではなく自然地形説が有力とされています。
地質学者や考古学者の中には、海底遺跡を自然の侵食や地殻変動によって形成されたものと考える意見が主張され、その背景に、海底遺跡に存在する垂直の階段状の構造があります。一見人工物に見えるこの構造ですが、海底火山から噴火したマグマが冷却される際に亀裂が発生し、それに沿って岩石が浸食されることでこのような地形が形成されたという観点から、人工物ではないと考察されています。
また、与那国島周辺は地震が発生しやすい場所であり、地震の影響で岩石の割れ目が規則的な形状を作り出していると推測する説も唱えられています。実際に、先述した自然地形加工説を提唱したロバート・ショック氏が実施した研究では、海底遺跡は風化と侵食作用によって形成された自然地形であると主張されています。
海底遺跡を堪能しよう!出会える生き物とベストシーズン
与那国島の醍醐味、海底遺跡でのダイビング。海底遺跡で出会える可能性のある生物や、おすすめなダイビングシーズンについて解説します。
与那国島でのダイビングは水深20mを超える場所もいくつかあるため、AOWダイバー以上のライセンスが望ましいです。
実際のツアーについて詳しく知りたい方は、以下のリンクから詳しい情報をご覧ください。
南西旅行開発
ハンマーヘッドシャークに出会える
与那国島では、11月末から4月にかけてハンマーヘッドシャークの群れに遭遇できる可能性が高いです。ハンマーヘッドシャークは水温が下がる冬になるにつれ、与那国島周辺の浅瀬を群れで移動する姿がよく目撃されています。冬に群れを成す理由についてはっきりと解明されていないものの、水温が低くなる冬はエサの魚も浅瀬に移動するため、エサを追って浅瀬に現れる可能性も考えられています。
そのため、ハンマーヘッドシャークに出会いたい方は冬〜春にかけて訪れることをおすすめします。
また、与那国島にいるハンマーヘッドシャークは和名だと「アカシュモクザメ」と呼ばれ、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの絶滅危惧種に分類されています。そのため、与那国島でハンマーヘッドシャークに出会えることは非常に貴重な経験だといえるでしょう。
海底遺跡は冬がベストシーズン
海底遺跡ダイビングのベストシーズンは、ハンマーヘッドシャークに出会えることに加え、風向きの観点からも冬がおすすめです。
冬は北から南への風向きに変わり、かつ島そのものが北風を遮ります。そのため、冬は海底遺跡を含めた島の南側のダイビングポイントでは、海面が荒れることが少なく、海洋状況が良いです。
冬の沖縄の水温は15〜22℃と比較的暖かいですが、島が北風を遮っているとはいえ海上は風もあり、海から上がってきたときには寒く感じるでしょう。そのため、以下のような寒さ対策がおすすめです。
・ボートの上ではボートコートを着る
・ドライスーツや6.5㎜のツーピースウェットスーツ(ロクハンと呼ばれるスーツ)を着る
月毎の平均気温や平均水温、スーツなどについて表にまとめました。ダイビングの際に参考にしていただければと思います。

AOWダイバー以上のライセンスが必要
海底遺跡でダイビングをする際は、何点か注意すべき点があります。
前提として、海底遺跡でダイビングを楽しみたい場合はAOWダイバー相応のスキル感が求められます。AOWとは、PADIオープン・ウォーター・ダイバー(OWD)コースよりもさらに上級のダイビングコースを指しています。
まず、OWDダイバーとみなされるには、最低限以下の場所で問題なくダイビングを遂行できる程度のスキルが求められます。
(1)日中の安定した水域
(2)最大18m程度の水深
(3)上部に遮るものがなく、直接水面に浮上できる場所
これらのスキルに加え、AOWダイバーには水深が18mよりも深い「ディープダイビング」における潜水スキル、コンパスを使用した水中でのナビゲーションスキルも求められます。
そのうえで、まずはご自身のダイビング経験やスキルと照らし合わせながらダイビングを検討しましょう。海底遺跡でのダイビングは水深20mを超えるところがほとんどです。そのため、AOWダイバー以上のライセンスを持ったダイバーしか受付しないというショップも多くあります。
海底遺跡の周辺は流れが速いことも特徴です。事故やトラブルを予防するため、ドリフトダイビングができるダイバーを優先して受付するショップもあります。これらのことから、海底遺跡は中級者レベルのポイントであり、経験本数50〜100本以上という本数の制限を出しているショップも多いです。気になる場合は一度ショップに尋ねてみることもおすすめです。
海底遺跡で実際にダイビングをする際の注意点として、歴史的に貴重な場所である遺跡を傷つけたり、石や生物を持ち帰ったりすることは禁止されています。マナーを守って、海底遺跡ダイビングを楽しみましょう。
実際のツアーについて詳しく知りたい方は、以下のリンクから詳しい情報をご覧ください。
南西旅行開発
何が便利?与那国島への行き方と島内での交通手段
「与那国島の海底遺跡を見てみたい!」と思った際、気になるのはアクセス方法です。日本最西端の離島のためアクセスがあまり良くないのではないか?と考えるかたも多いでしょう。
しかし、与那国島は想像しているよりもアクセス方法が充実していることが特徴です。ここでは、与那国島への交通手段と海底遺跡へのアクセス方法についてご紹介します。
補足として、宿泊施設からダイビングに出発する港までは、ダイビングサービスが送迎してくれます。そのためダイビングをする際には交通手段の心配はありません。ちなみに、ダイビング以外で海底遺跡を楽しみたい方は、以下のように水中観光船で遊覧できます。
▼与那国島・海底遺跡へのアクセス方法の概要▼

※海底遺跡は久部良港からの水中観光船で約1時間ほど遊覧できます。サーウェス与那国も運航しています(要事前予約)。
※本記事に記載しているアクセス方法は2025年2月現在のものです。交通機関の最新情報については、必ずご自身でWEBサイトなどを確認してください。
与那国島への行き方|飛行機・フェリー
飛行機を使用する場合:与那国島への交通手段として、まず考えられるのは飛行機です。那覇と与那国島間では琉球エアコミューターが就航中です。料金は片道で平均30,000円程度、フライト時間は約1時間10分ほどです。
▼那覇空港から与那国島へのフライト例▼
飛行機 航空会社:琉球エアコミューター | |||||
---|---|---|---|---|---|
那覇⇒与那国島 | 与那国島⇒那覇 | ||||
便名 | 出発時刻 | 到着時刻 | 便名 | 出発時刻 | 到着時刻 |
RAC721 | 7:20 | 8:40 | RAC724 | 11:35 | 12:50 |
RAC727 | 14:35 | 16:00 | |||
2025.2.6現在 |
出典:JAL( https://www.jal.co.jp/jp/ja/dom/route/time/ )
フェリーを使用する場合:与那国島へのアクセスとして、石垣島と与那国島間を結ぶフェリーを使うことも考えられます。
フェリーが運航する日時や料金については以下の表にまとめました。フェリーの運航は週2回であるため、注意が必要です。
フェリー会社:福山海運 フェリーよなくに | |||
---|---|---|---|
片道料金 | 往復料金 | 所要時間 | |
石垣⇒与那国 (毎週火曜日・金曜日10時発 1本/日) |
大人3,550円 小人1,780円 |
大人6,750円 小人3,560円 |
4時間30分 |
与那国⇒石垣 (毎週水曜日・土曜日10時発 1本/日) |
大人3,550円 小人1,780円 |
大人6,750円 小人3,560円 |
4時間30分 |
出典:一般社団法人 与那国町観光協会( https://welcome-yonaguni.jp/guide/3709/ )
与那国島内での交通手段|レンタカー・レンタサイクル・バス
与那国島内での移動手段について、レンタカー、レンタサイクル、バスごとに解説します。
レンタカーを使用する場合
移動効率を考えるのであれば、レンタカーを活用しましょう。与那国島で利用できるレンタカーの料金はこちらです。。
▼レンタカー料金の目安▼
最西端観光会社(与那国空港向い徒歩1分) | |||||
---|---|---|---|---|---|
軽自動車 | ノート | ヴィッツ | ワンボックス | ライトバン | |
24時間 | 5,000円 | 7,000円 | 8,000円 | 15,000円 | 7,000円 |
以降一日 | 4,500円 | 6,000円 | 7,000円 | 15,000円 | 6,000円 |
与那国ホンダ(生活路線バス 終点祖納下車 ENEOSスタンド前) | |||||
軽自動車 | 乗用車1300㏄ | 乗用車1500㏄ | 7~8人乗りワゴン | ||
24時間 | 5,500円 | 7,500円 | 8,500円 | 15,000円 | |
以降一日 | 5,000円 | 6,000円 | 7,000円 | 13,000円 |
出典:最西端観光株式会社( https://yonaguni-okinawa.com/rentacar/ )
レンタサイクルを使用する場合
自然を満喫したい方にはレンタサイクルがおすすめです。レンタサイクルを利用できる事業者として、「ラクにコト―」が挙げられます。ラクにコトーは与那国島空港より車で20分(駐車場8台)程度です。
▼レンタサイクル(電動自転車)料金の目安▼
ラクにコト―(送迎片道250円 自転車の配達・回収は片道500円) | |||
---|---|---|---|
24時間 | 3,500円 | ||
以降一日 | 3,000円 |
出典:たんぽぽ流ツアー( https://www.tanpoporyu.com/rental )
バスを利用する場合(無料で利用できます)
公共交通機関を用いて無料で移動したいなら、バスを活用しましょう。与那国島で祖納・久部良・比川を走る生活路線バスは、無料で乗車可能です。
交通アクセス | 与那国観光WEB海底遺跡以外も!3つのおすすめダイビングスポット
与那国島には海底遺跡以外にも魅力的なダイビングスポットがあります。今回は数あるダイビングスポットの中でも特におすすめのスポットについて、出会える生物や必要なスキルについて解説します。どのポイントでも遊泳禁止区域や遊泳禁止看板には十分注意し、立ち入り禁止区域でのダイビングはしないようにしましょう。
ハンマーヘッドシャークに出会える「西崎」
ハンマーヘッドシャーク(11月末〜冬の時期)、イソマグロ、ギンガメアジ、カメなどに出会えます。ハンマーヘッドシャークを狙ってダイビングをする際は、黒潮に乗ってドリフトダイビングをするブルーウォーターダイビングをすることが多いため、ドリフトダイビングと中性浮力のスキルが必要です。また、最大水深が30ⅿ程あり流れも速いため、AOWダイバー以上が望ましいでしょう。
西崎は海底遺跡がある久部良港からボートで3分のところにあるポイントです。
真っ白な砂地が広がる「ホワイトワールド」
ホワイトワールドは久部良港からボートで3分ほどのところにある夏におすすめのポイントです。真っ白な砂地が広がっており、クダゴンベなどの生物がいます。流れは速くありませんが、最大水深30ⅿ程なのでAOWダイバー以上が望ましいです。
様々な地形を楽しめる「ムーラン」
ムーランは久部良港からボートで約15分のところにあり、四つ叉のアーチなど様々な地形を楽しめるポイントです。アケボノハゼ、オキナワサンゴアマダイなどの生物に出会えることがあります。生物が多くいるダイビングスポットのため、水中写真を撮影するダイバーにはおすすめです。一方で流れが速い個所や最大水深が25ⅿ程ある個所があり、AOWダイバー以上が望ましいです。
ダイビング以外も楽しむ!与那国島のおすすめ観光スポット4選
ダイビングの後は、与那国島の観光も満喫したいはず。そこで、与那国島のおすすめ観光スポットを4つ紹介します。
ドクターコトー診療所オープンセット(観光)
人気ドラマ「ドクターコトー診療所」のロケ地です。実際に撮影で使用された診療所のセットを見学できます。15歳以上は300円で入場可能です。営業時間は9:00~18:00、与那国空港から車で約20分のところにあります。
立神岩(観光)|与那国島南東部の海岸から垂直にたつ岩
与那国島南東部の海岸に垂直にそびえ立つ岩です。立神岩展望台からの眺望が特におすすめであり、展望台にはトイレも完備されています。与那国空港から車で約30分でアクセス可能です。
東崎(観光)|断崖絶壁の岬
与那国島の東端に延びる断崖絶壁の岬です。岬からは緑の牧草地と沖縄の青い美しい海を堪能できます。全国に8種しかいない天然記念物の日本在来馬の一種である「与那国馬」が生息している場所です。与那国空港から車で約20分でアクセス可能です。
軍艦岩(観光)|軍艦のようにみえる岩
軍艦のような姿が特徴的な岩です。軍艦岩の手前の崖には展望台が設置されているため、じっくり眺めることができます。別名「サンニヌ台」とも呼ばれる岩です。与那国空港から車で約25分でアクセス可能です。
日本最西端の与那国島で神秘的なダイビング体験を!
海底遺跡でのダイビングは、他の場所では体験できない神秘的な景色を見ることができます。また、冬限定ですが、ハンマーヘッドシャークに出会える可能性も高いことが特徴です。さらに、与那国島には海底遺跡以外にも魅力的なダイビングスポットも数多くあります。
与那国島の神秘的な海底遺跡を含めたダイビング体験について詳しく知りたい方は、以下のリンクから詳しい情報をご覧ください。
南西旅行開発